★中間財務諸表における税効果
中間財務諸表制度が導入されてから久しいのですが、従来の中間財務諸表は年度決算のための予測をするという立場すなわち予測主義を採っていました。中間財務諸表についての税効果会計の導入に伴い、予測主義から実績主義へと作成基準が変更になりました。したがって、中間財務諸表に税効果会計を適用する場合も、年度決算と同一の方法を適用することが必要となります。しかし、中間財務諸表はその性格上、簡便性も要請されるところから、中間決算に際しては年度決算と異なる簡便化された方法の採用の余地を残しています。
●原則法
■基本的な考え方
原則法とは、中間事業年度をあくまで年度決算であるかのように1事業年度とみなして、一時差異等の発生及び解消に係る税効果相当額を計上する方法です。したがって、年度決算と同一の方法といえます。
■税率
適用される税率は、中間決算日時点で有効な税率(その時点で税率改正が確定している場合には、改正税率)によります。
中間会計期間中に税率改正があった場合は、繰延税金資産または繰延税金負債の再計算を行い、その差額は年度決算と同様に処理することになります。
■利益処分項目
租税特別措置法に基づく諸準備金等が発生し、期末に利益処分を予定している場合は、利益処分が行われたものとして法人税等を計算すると同時に、この将来一時加算差異について繰延税金負債を計上します。また、諸準備金等の取り崩しが年度決算において予定されている場合も、中間決算においてその税効果を考慮します。
■前期末の税務上の繰越欠損金
前期末に税務上の繰越欠損金があり、通期ベースで課税所得が発生し、その全部または一部の充当が見込める場合では、その繰越欠損金は中間会計期間の課税所得から優先して充当します。
■繰延税金資産の回収可能性
中間会計期間末の繰延税金資産についても回収可能性を検討しなければなりませんが、回収可能かどうかは中間決算日時点での状況に基づいて判断することになります。
●簡便法
■基本的な考え方
簡便法は、中間会計期間末における個別の税効果の認識をせず見積実効税率という概念を用いて簡便的に中間会計期間に係る法人税等を計上する方法です。
すなわち、期首に計上されている繰延税金資産または繰延税金負債を、原則として中間会計期間末にそのまま計上し、中間会計期間末における個別の税効果の認識をしません。その代わりに、税引前中間純利益に次の算式に基づく見積実効税率を乗じて法人税等を計上することになります。
見積実効税率 =
予想年間 一時差異等に
未計上繰延
( 税引前 ±
該当しない − 税金資産の )
× 法定実効税率
当期純利益 申告調整項目
回収可能額
―――――――――――――――――――――――――――――――
予想年間税引前当期純利益
■中間会計期間中に税率変更があった場合の見積実効税率
中間会計期間において税率の変更があった場合には、税率変更に係る繰延税金資産または繰延税金負債の再計算差額が発生します。これは、当期の税金費用に影響してしまうため、上記の見積実効税率を以下のように計算することになります。
予想年間納付税額 + 予想年間法人税等調整額
見積実効税率 =――――――――――――――――――――――
予想年間税引前当期純利益
■法定実効税率を使用する場合
見積実効税率を使用した場合に、中間会計期間に係る法人税等が著しく合理性を欠く場合が発生することがあります。このような場合には、見積実効税率の代わりに法定実効税率を用いることになります。
(1) 予想年間税引前当期純利益がゼロまたはマイナスとなる場合
(2) 予想年間税金費用がゼロまたはマイナスとなる場合
(3) 上期と下期の損益が相殺されるため、一時差異に該当しない差異に係る税金費用の
影響が予想年間税引前当期純利益に対して著しく重要である場合
次のような算式として示すことができます
( 税引前中間
重要な一事差異に該当
純利益(損失) ± しない申告調整項目
) × 法定実効税率
●中間財務諸表での税効果に関する表示と注記
・中間貸借対照表
原則法にあっては、繰延税金資産・負債の表示は「その他」に記載して表示します。この金額に重要性があれば(総資産の100分の5以上)、区分して表示します。
簡便法を適用した場合、一括計算された税金費用の相手勘定が借方残高になっていれば流動資産に、貸方残高になっていれば流動負債に一括表示します。
・中間損益計算書
「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を一括表示し、その旨の注記を行うことができます。
ただし、簡便法は、その性格上、上記の2つを区分することがもともとできませんので、一括表示してその旨を注記することになります。
・注記
中間財務諸表では、税効果に関する注記は原則として不要とされています。
●中間連結財務諸表
連結会社の各々の個別中間財務諸表の作成にあたっては、原則法または簡便法の選択を各社ごとに継続適用します。
連結手続上の修正項目に係る一時差異については、中間会計期間を含む事業年度に適用される税率に基づき年度決算と同様に計算します。
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