日本の制度会計

日本の制度会計

日本の企業会計制度には、証券取引法に基づくものと商法に基づくものとの2つの制度があります。目的とするところが、証券取引法が将来の株主を含めた投資家に有用な会計情報の開示であるのに対し、商法は債権者及び株主の利害調整と株主に対する会計情報の報告であるという違いがあります。また、証券取引法が適用される会社は、上場会社など限られた会社であるのに対し、商法は、すべての会社に適用されます。
証券取引法における企業会計の開示は、個別財務諸表、中間財務諸表、連結財務諸表、連結中間財務諸表(平成12年4月以後に開始する事業年度から制度化予定)を通して行われています。一方、商法上では、個別決算書のみが作成を義務付けています。

証券取引法の企業開示制度における税効果会計

これまでは、連結財務諸表上のみで税効果会計が導入されていました。しかも、義務付けられているわけではなく、各企業にその採用の決定は委ねられていました。また、税効果会計を導入していても、連結上の修正仕訳に関する部分にのみ税効果会計を適用している企業もあれば、全面的に適用している企業もあるという状態でした。個別財務諸表で税効果会計の適用が見送られていた背景には、確定決算主義が色濃く反映しています。商法に基づいた決算数値を基に個別財務諸表が作成されており、税効果会計は商法で採用されていないため、当然のように採用されていなかったのです。平成10年12月12日付で財務諸表規則が改正され、税効果会計の全面適用が強制されることになりました。

商法の企業開示制度における税効果会計

今まで、商法の本法及び商法計算書類規定において、税効果会計に関する規定は置かれていませんでした。商法は、債権者の保護に重点を置いており、この観点から配当可能利益を厳密に計算するという要請がありました。これに、税効果会計が馴染まないものとされていたのです。
今回、商法計算書類規則が改正され、税効果会計に関する規定が盛り込まれました。ただし、計算書類規則は、あくまで決算書の表示に関する規定ですので、税効果会計を採用した企業の決算書の表示方法を規制しているだけです。したがって、財務諸表規則の規定を適用している会社は、商法上も適用しなければならないとこになりますが、財務諸表規則の適用を受けない会社については、任意適用ということになります。




梅田公認会計士事務所     公認会計士・税理士  梅田 泰宏
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