改正商法の主要項目のまとめ

13年6月成立13年10月1日施行
・金庫株導入
・単元株導入
・端株制度改正
・1株当り純資産規制撤廃
・法定準備金の減少手続き

13年11月成立14年4月1日施行
・新株発行規制緩和
・種類株式制度の整備
・株式の転換
・新株予約権
・新株予約権付社債
・会社関係書類のIT化
・議決権行使のIT化
・計算書類の電子開示

13年12月成立14年5月1日施行
・監査役の機能強化
・取締役の責任軽減
・株主代表訴訟制度の見直し

14年5月22日成立(5月29日公布)1年以内に施行
・種類株主の役員の選解任権
・株券失効制度
・所在不明株主の株式売却制度
・端株等の買増制度
・株主総会に関する改正
・取締役報酬規制
・重要財産委員会
・大会社以外の会計監査人による監査
・委員会等設置会社
・計算関係規定
・大会社について連結決算書の導入
・現物出資等の目的財産の価格証明人制度

・金庫株制度
自己株を取得して、自社の金庫にしまってしまうということから、金庫株といわれているのですが、従来から自己株式取引は行われていました。今回、取得理由が撤廃された代わりに、中小企業にとっては大変使いづらいものとなってしまいました。すなわち、自己株式取引は、従来からの資産取引ではなく、資本取引という概念で持って統一し(連結決算制度では、制度の導入以来資本取引とされていました)、配当可能利益の範囲内で、しかも、購入額は定期株主総会で決議する必要があります。したがって、配当可能利益を蓄積していない中小企業は、ほとんどこの制度が使えなくなってしまうという結果になります。特に、相続が発生した場合など、問題が出てきそうです。
なお、処分は取締役会で決議しますが、処分額の内容を資本構成項目に応じてみなし配当を計算することとなりました。

・1株当り純資産規制撤廃
会社設立時の発行価額5万円規制が撤廃されました。と同時に、額面株式制度も廃止されています。したがって、今後は1株いくらでも発行することができます。また、従来は株式分割をする場合には分割後の1株当り純資産は5万円を上回っていなければなりませんでしたが、この規制もなくなっています。
なお、大半の会社は、定款で1株当りの額面金額を規定していましたが、改正と同時にその規定は意味をなさなくなり、登記簿謄本上も職権により、1株の額面金額欄は抹消されています。

・法定準備金の減少手続
自己株式関連で、配当可能利益の確保という観点から、従来利益処分で社外流出となる処分項目の1/10以上をを資本金の1/4に達するまで利益準備金に積むこととされていましたが、今後は、資本準備金と利益準備金と合計して資本金の1/4となればよいこととなりました。したがって、定時総会決議により、債権者保護手続を条件に資本準備金を取り崩して「その他の資本剰余金」として処理することにし、これも、配当可能利益の一部としてよいこととなっています。

・新株発行規制緩和
従来新株を発行する場合には、授権資本枠内でしか発行できませんでしたが、株式譲渡制限会社に限り、実質上上限が撤廃されています。

・新株予約権

新設された制度で、ストック・オプションもこの新株予約権の無償発行という位置付けとなりました。また、従来は発行枠や付与者が限定されていましたが、改正により規制枠が拡大されています。
税法上は、ストック・オプションの扱いについてまだまだ問題点を残しています。
従来の分離型新株引受権付社債(いわゆるワラント債)は、ワラントと普通社債の同時発行という位置付けとなりました。したがって、社債を発行しないでワラントだけ発行するということも可能となっています。
今後、事業承継などへの利用方法が検討されると思われます。

・新株予約権付社債
これも新設された制度です。従来の転換社債及び非分離型新株引受権付社債を包含させた形です。

・株券失効制度
従来、株券を喪失した場合には、裁判所を関らせた公示催告、除権判決制度がありました、それでも善意の第三者に対抗できないため、これを改正し株券を喪失した株主は、会社に対して申請することにより喪失登録名簿に登録され、意義申請等がなく1年が経過すると株券は自動的に失効し、再発行を受けられることになります。

・会社関係書類と議決権行使のIT化及び計算書類の電子開示
書面だけではなく電子的な方法による運用が可能となりました。実際に、従来総会決議報告に記載されていた貸借対照表等を自社のホームページをご覧下さいという会社も現れています。

・現物出資等の目的財産の価格証明人制度
従来、多額の現物出資を行う場合には、裁判所に検査役の選任を依頼し、検査役検査を経て現物出資が可能となっていましたが、現物出資の目的たる財産価格の証明を、税理士、公認会計士、弁護士及びそれぞれの特定法上の法人が行えることとなりました。証明者はそれだけ責任を負うことになりますが、中小企業におけるデット・エクイティ・スワップ(債務の資本化)への利用は研究課題となるでしょう。

総括的にみると、一連の改正は、株式・資本関係と会社の機関並びにIT化についてでしょう。実務に密着する点では、貸借対照表の資本部の表示方法が大幅な変更を受けています。参考前までに記載例を掲げて見ます。

資本金 ×××
資本剰余金 ×××
   資本準備金 ×××
   その他の資本剰余金 ×××
       資本金及び資本準備金減少差益    ×××
       自己株式処分差益 ×××
利益剰余金  ×××
   利益準備金 ×××
   任意積立金 ×××
   当期未処分利益 ×××
   (うち当期利益)  (×××)
土地再評価差額金 ×××
その他有価証券評価差額金 ×××
自己株式

 ▲×××

          資本合計 ×××

平成14年改正商法の概要

既に要綱として発表されている来年度施行の改正商法が11月21日参議院を通過しました。

・ワラントは、従来社債とセットでないと発行できませんでしたが、単独で発行が可能となります。
・ストックオプション制度の規制が大幅に緩和されます。
・トラッキング・ストックが正式に認可されます。
・無議決権株の発行枠が拡大されます。
・株式譲渡制限会社の授権枠が事実上撤廃されます。

10月施行の改正商法より来年4月施行のもののほうが、ベンチャー企業向けといえそうです。

以下、参議院での法案要旨です。

商法等の一部を改正する法律案(閣法第六号)(衆議院送付)要旨

本法律案は、株式会社等の経営手段の多様化を図るため、新株予約権の制度を新設し、種類
株式の制度の改善を図るとともに、株主総会における議決権の行使、会社関係書類の作成等を
電磁的方法により行うことを可能にする措置等を講じようとするものであり、その主な内容は次の
とおりである。

一、新株予約権制度の新設
1 あらかじめ定めた価額で会社の株式を取得することができる権利である「新株予約権」を新設する。
2 会社は、新株予約権を発行することができる。
3 新株予約権の無償付与となるストック・オプションについて、付与対象者、付与できる株式数、
    権利行使期間に関する制限を廃止し、株主総会の授権決議における決議事項を簡素化する。

二、種類株式制度の見直し
1 会社は、株式の種類として、新たに、議決権を行使することができる事項につき内容の異なる
     数種の株式を発行することができる。
2 議決権制限株式の総数は、発行済株式総数の二分の一までとする。
3 利益配当に関して内容の異なる種類株式については、定款でその配当の上限額その他算定の
    基準の要綱を定めたときは、定款をもって配当額を取締役会等で決定できる旨を定めることがで
    きる。
4  株主総会の決議事項の全部又は一部について、その決議のほかに種類株主の総会の決議を要
    する旨を、定款をもって定めることができる。

三、株式の転換
会社側から強制的に転換をすることができる「強制転換条項付株式」を認め、株主側から転換を請求できる従前の「転換株式」を「転換予約権付株式」とする。

四、新株発行に関する規制緩和
株主総会における新株の有利発行決議の有効期間の延長、譲渡制限会社における発行株式総数に関する制限の廃止等、新株発行に関する規制を緩和する。

五、会社関係書類の電子化等
1 会社は、定款や貸借対照表等の会社関係書類を電磁的方法により作成することができる。
2 株主総会の招集通知等の会社・株主間の通知、請求等についても、電磁的方法によることが
    できる。
3 会社は、取締役会の決議をもって、株主総会に出席しない株主が電磁的方法により議決権を
     行使可能である旨を定めることができる。

六、計算書類の公開方法の拡大
会社は、取締役会の決議をもって、貸借対照表又はその要旨の公告に代えて、電磁的方法により貸借対照表を五年間開示する措置をとることができる。

七、施行期日
この法律は、平成十四年四月一日から施行する。

平成13年改正商法の概要

平成13年6月22日に商法の改正が行われました。施行は平成13年10月1日となりました。
今回の改正は、自己株式取得及び制限見直しや株式単位の見直しが行われています。いわゆる金庫株の解禁と額面株式の廃止が中心です。以下にその概要をまとめてみました。

自己株式の取得及び保有制限の見直し

自己株式の取得
(1)取得の範囲
会社は、定時総会決議をもって、配当可能利益及び法定準備金の範囲内で、次の定時総会終結時までに取得できる自己株式の種類、総数及び取得価額総額を定め、これに基づいて自己株式が取得できます。
(2)取得の方法
市場価格のある株式は、原則として市場取引又はTOBによりますが、売主につき株主総会の特別決議を経て他の株主にも売主になる機会を与えれば、未公開会社と同様に相対取引によることもできます。
(3)取締役の責任
取締役は、決算期末に資本の欠損が生じる惧れがある場合は、自己株式の買受けをすることができません。決算期末に資本の欠損が生じた場合は、自己株式を買受けた取締役等は、その欠損額を上限として賠償責任を負うことになります。ただし、注意義務を怠らなかったことを証明すれば、その責任は負いません。
 
自己株式の保有
会社は、取得した自己株式を期間、数量等の制限なく保有することができます。
 
自己株式の処分等
(1)消却
自己株式は、取締役会決議によって消却することができます。
(2)処分
・保有自己株式は、代用自己株式として利用することができます。
・取締役会決議によって処分することができます。
  この場合には、新株発行の規程を準用することになります。

株式単位の見直し

会社設立時の制限の撤廃
会社の設立に際して発行する株式の発行価額が、5万円を下回ることができないという制限が撤廃されました。
 
株式分割時の制限の撤廃
株式の分割に際して、額面総額が資本額を超えることができないという制限及び分割後の1株あたりの純資産額が5万円を下回ることができないという制限が撤廃されました。
 
額面株式制度の廃止
額面株式制度を廃止し、無額面株式に統一されることになりました。
 
単位株制度の廃止
例えば1,000株を1単位とするような単位株式制度が廃止されました。
 
単元株制度の創設
会社は、定款で一定数の株式をもって1単元の株式とする旨を定めることができることとし、この場合の議決権は、1単元につき1個とすることになりました。
 
端株制度の整備
端株券を廃止するなどは株券制度の整備が行われます。
 




梅田公認会計士事務所     公認会計士・税理士  梅田 泰宏
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